課題番号:21K02952
研究題目:科学探究的アプローチによる理科授業デザイン開発
研究成果:現在(2025年3月)までの研究成果として、次の事項が挙げられる。
学年 | 単元名等 | 探究教材等 | 授業デザイン | 授業のねらい |
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小6 【実践授業実施】 (星野ら2020) |
てこの規則性 | てこの竿とする疎密のある木材 | 1 g未満の豆の質量を正確に量りたいが,既存の秤では1 g以上のものしか量れない状況を説明したのち,ミニシーソーを製作するアイデアを児童から出させる。このミニシーソー製作の材料として疎密のある木材を竿として与え,製作を指示する。一班に一組分のシーソーの材料を与える。 | 児童は,竿の中心を支点としたシーソーを作ろうとするが,上手くバランスがとれないことに遭遇する。この課題を解決するために班内で自然と解決策の提案や議論が発生する。やがて,支点を中央からずらす班や竿の一方に錘をつけてバランスをとる班などが生じるであろう。このことと実際に豆の質量を量ることを通して,支点から作用点までの距離と錘との関係性(モーメント)に気付くであろう。 |
小6 | ものの燃え方 | 芯の先端を切断したろうそく | ものの燃え方と空気の節で,窒素,酸素,二酸化炭素のなかに火のついたろうそくを入れる実験をした後に芯の先端を切断したろうろくを提供して火をつけるよう指示する。 | 児童は,ろうそくに火をつけようと何度もマッチやトーチの炎をろうそくの先端に近づけるであろう。5,6回目でようやく芯が露出し,ろうそくに火がつくであろう。直前の実験で,ものが燃えるには酸素が必要なことを理解した児童であるが,空気中に酸素があるにもかかわらず,なかなかろうそくに火がつかなかったことを不思議に思うであろう。酸素が気体であることを認識させ,そのうえで芯の役割を考えさせ,ものが燃えるにはものの一部も気体になることが必要なことに気付かせる。 あるいは,なかなかろうそくに火がつかなかったことを不思議に思うだけで留めておいても良い。中学校の発展で学習する。 |
小6 | 水溶液の性質 酸性,アルカリ性,中性 |
日本産のミネラルウォーター(軟水)とヨーロッパ産のミネラルウォーター(硬水) | 種々のミネラルウォーターの液性を調べるよう指示する。 | 児童には,リトマス紙のほかにムラサキキャベツ液やBTB液を与え,液性を調べさせる。ミネラルウォーターは,中性という先入観があり,リトマス紙では,どちらの色のリトマス紙も変化はないが,ムラサキキャベツ液やBTB液では,中性の他にアルカリ性を示すミネラルウォーターがあることを不思議に思うであろう。 内容物の表示ラベルを確認させて,どこから採取した水がアルカリ性を示しているかを認識させ,その理由を考えさせる。 マグネシウムやカルシウムの含量の違いに気が付く児童もいるであろう。その違いの原因について,子どもたちは自然と議論を始めるであろう。子どもたちが結論に達せず,オープンエンドでも構わない。 |
小6 【実践授業実施】 (星野ら2021) |
生物と地球環境 食物連鎖 |
田んぼとその周辺をフィールドとして稲の生育に相応しい生き物の食物連鎖の関係を構築するための生き物のマグネット付き写真(オタマジャクシとカエルを除く) | 水田と周辺の写真を貼った小型のホワイトボードに与えられた生き物を食う食われるの関係性がわかるように貼り,矢印で示すよう指示する。 | 児童は,田んぼの良い環境維持にとって“中間捕食者・キーストーン”となる生き物(オタマジャクシとカエル)が足りないことに気づき,それが何であるかを考え,確認するために自然発生的に仲間で議論を始めるであろう。 主体的に課題を見いだし,その解決に向けて思考,判断し,表現することをねらいとする。 |
中1 【実践授業実施】 (星野ら2020) |
身近な物理現象 力のはたらき 力の大きさとばねの伸び |
プラスチック製のばね | 金属製のばねとともにプラスチック製のばねを与え,ばねに加わる力とばねの伸びとの関係を調べさせる。 | 生徒は,フックの法則に従う金属ばねと初張力を持つプラスチック製のばねとの伸びと加える力との関係が異なることに気づき,その違いが何に基づくものなのか,議論を始めるであろう。金属ばねとプラスチック製ばねとの比較により,ばねは形状や材質によりフックの法則に従う範囲が異なることを知る。 |
中1 【実践授業実施】 |
大地の成り立ちと変化 マグマが固まった岩石 |
マグマのモデル物質としてエリスリトール(meso-エリトリトール,甘味料,融点119-123℃) | ステンレス容器中で予め融解し液体となったエリスリトールを一班に対して2つ与え,一方は空気中で自然冷却,もう一方は水道水に浸して固化させるよう指示する。 | 生徒は,液体状のエリスリトールの冷却の仕方により2種類の状態の異なる固体を得て,それらが2種類の火成岩,つまり火山岩と深成岩のそれぞれの特徴である斑状組織と等粒状組織と似ていることに気付くであろう。そのことから,同じ物質(マグマ)でありながら冷え方の違いにより異なる岩石が生成することを理解する。 |
中2 | 化学変化と原子・分子 物質の成り立ち 物質の分解 |
酸化銅(CuO)の粉末 | 炭酸水素ナトリウムの熱分解を行った後,何かの金属の酸化物であることを述べ,どのようにしたら金属のみとして取り出せるか,実験を考えさせ,実施させる。 | 生徒は加熱することを考え,実施するであろう。しかし,単に加熱しただけでは銅と酸素との結合が切れないことを知る。その後,酸素と仲の良い元素を考えさせ,炭素を思い浮かばせる。実際,還元(酸素を失う化学変化)も扱う次のいろいろな化学変化の章で,酸化銅の還元を行う呼び水とする。 |
中2 | 化学変化と原子・分子 いろいろな化学変化 化学変化における酸化と還元 |
芯の先端を切断したろうそく | 有機物の燃焼の節で,炭を燃焼させると炎を見ることはできないが,燃焼後に二酸化炭素が発生したことは石灰水との反応で確認する。同様に,カセットコンロでは炎を生じて燃焼していることを知る。その後,芯の先端を切断したろうそくに火をつけるよう指示する。 | 生徒は,ろうそくに火をつけようと何度もマッチやトーチの炎をろうそくの先端に近づける。5,6回目でようやく芯が露出しろうそくに火がつくであろう。直前の実験で,なかなかろうそくに火がつかなかったことを不思議に思うであろう。カセットコンロでは炎を生じたことを認識させ,そのうえで芯の役割を考えさせ,炎を生じてものが燃えるにはものの一部が気体になることが必要なことに気付かせる。 |
中2 | 電流とその利用 電流・電圧と抵抗 |
細いが長さが電熱線bより短く,電圧をかけた時に電熱線bとほぼ同じ電流が流れる電熱線a | 生徒には太さが違う電熱線であることのみ示して,電圧を変えた時の電流の大きさを調べるよう指示する。 | 生徒は,太さが違うにもかかわらず,2つの電熱線に同じ電圧をかけるとほぼ同じ電流を示すことで疑問を生じるであろう。 班内あるいは隣接する班の間で互いの実験結果を確認するようになり,その原因の議論を始めるであろう。これにより抵抗の概念を理解することをねらいとする。 |
中2 【実践授業実施】 (山田ら2023) |
気象とその変化 霧や雲の発生 |
実験室内の室温と湿度の調整(局所的) | セロハンテープを一部に貼ったステンレス製のコップと温度計を与え,コップの中の室温と同じ温度の水に氷を入れ,少しずつ温度を下げて,コップの表面が曇る温度を見いだすよう指示する。 | 実験室内の気温と湿度が局所的に異なることから,露点が測定する場所によって異なる結果となる。クラス全体でこの結果を共有することで,なぜこのような結果になったのかを議論し始め,気温によって空気に含まれる水蒸気の量が異なることと気温が低くなると含まれる水蒸気量が小さくなることを見いだしていく。 |
中3 | 化学変化とイオン 化学変化と電池 |
ダニエル電池を組み立てる材料の隔壁として素焼きの小さな植木鉢 | ダニエル電池の装置の組み立てに必要な材料を一班に一個分与え,電池を組み立てるよう指示する。 | 生徒は,植木鉢の穴を見て,塞ぐ必要性について班内で議論を始めるであろう。あるいは,穴が開いたままダニエル電池を組み立てる班もあるであろう。後者の班では,装置を組み立てた後,実際に電池を暫く駆動させ,同じく電池を駆動させた穴を塞いだ班の電極(亜鉛板)と比較させる。電極の様子の違い(後者の電極には銅が析出)から,穴を塞ぐ理由を考えさせ,生徒がダニエル電池の駆動する仕組みを深く理解することをねらいとする。 |